光源寺には産女という霊の彫像と掛け軸が奉られてて死んでしまった母親が埋葬された後に、子供を産み、三途の河の渡し賃である六文銭で飴を買って赤ん坊に与えていたという逸話が残っている。
昔、長崎の麹屋町という町に一軒の飴屋があった。
深夜、戸を叩く者がいるので主人が出てみると、美しいけれど顔色の悪い女が立っていた。
女は一文銭を出して飴を買っていった。
女は毎晩飴屋を訪ね、飴を買いに来ていた。
ところが、七日目の晩に女はお金がないので飴をめぐんで欲しいと頼んだ。
店主は快く飴を渡してやり、気になった店主は女の後をつけることにした。
女は滑るように歩き、光源寺の裏手の墓地で姿がスーッと消えた。
主人があたりを見回すと「おぎゃー!」という赤ん坊の泣き声が墓の下から聞こえてきた。
慌てて住職に知らせて、聞こえてくる墓を掘り起こした。
すると、棺の中には生まれて間もない赤ん坊が母親の亡骸の隣に座っていたという。
母親は埋葬された後に子供を産み落とし、三途の川の渡し賃である六文銭で飴を買って乳のかわりに与えていたのだった。
それから光源寺ではその女を産女(うぐめ)と名づけ、死んでもなお子供を育てる母親の強い想いに尊敬の念を込め彫像と掛け軸で奉っているという。
長崎県長崎市伊良林1丁目4−4