この峠では白いワンピースを着た女性の目撃情報がり、真夜中に裸足で人気の無い峠道を歩いていたと言う。
周辺でも白い服を着た不審な女性が度々目撃されているが、決まって深夜、人気の無い道をゆらゆら歩いてるらしい。旧定峰峠もあるが、車両は通れず自転車か徒歩のみとなっている。
友人が学生だった頃、定峰峠を仲間同士でドライブしていた。仮にAとBとしておこう。
彼らはドライブが好きで学校が休みだったりすればいつも集まってドライブしていた。彼らが出発したのは深夜の11時頃だったそうだ。
「どこに行く!?」Aが切り出した。
「定峰は?」「賛成!!」
友人が言うとAは賛成したが、Bはなぜか一生懸命に反対した。
「あそこはやめた方がいいよ!他のところ行こうぜ?」
「なんだよびびってるの!?」、「そうじゃなくってさー。マジであそこはやめた方がいいんだよ。」
そんな会話を続けていたが結局、二人の勢いに負けて3人は定峰峠へドライブへ行く事になった。
峠の麓へは1時間程度で着き、山道を走り始めた。時々、後方から走り屋が来て追い抜かして行くが、それ以外に車は無いので基本的に彼らは街灯もない山道をひたすら頂上に向かって走った。頂上までいって夜景を見てやろうという魂胆だった。
最初は学校であった話や女の話などで盛り上がっていたが、やがてBがしゃべらなくなった。
「どうしたの?もしかして酔った?」友人が聞いてもBは生返事しか返さない。
つまんねーの。
と友人はしばらくBを差し置いて、ドライバーのAと会話していたが、やがて飽きてきて窓の外を見始めた。友人の窓からは切り立った崖から生える背の高いスギの木がずーっと連なって見えた。
定峰峠の山道はそのような景色が続くのである。
「春になったら花粉症はやばそうだね。」友人がBにそう言うとBは「窓の外はあんまり見ない方がいいよ。」という。
友人は今まで黙っていたBがいきなりそんな事をいうので「なんで?」と聞き返しましたが、Bは答えませんでした。
「そんな事いって俺たちをビビらせようとしてるんでしょ!?その手にはのらないよー」友人はBに言って窓の外をそのまま見ていました。すると、窓の外の木に一瞬人がいたように見えました。
「!・・・おい、A、今人がいなかった?右の木の横にさあ!」
Aは笑って返しました。
「いる訳無いじゃん。この横の木、30メートル下から生えているんだよ。どんだけ高いところにいるのそいつ!?」
確かにそうでした。峠に生えているスギの木は高さが30か40メートルはあろう下の急斜面から生えていた。でも確かに、そこに人がいた。友人は白いワンピースを来た女の人が木の横に立っているのをみたそうです。
30メートルの空中に浮いている女の人を。
あとから分かった話なのですが、Bは実は霊感があり定峰峠にはたくさんの霊魂がさまよっている事を知っていたそうです。
なので定峰峠に行くのを止めたそうです。定峰峠のドライブ中に途中から黙ったのは車道の横に生える木の横に定峰峠で事故死した人たちの霊を見てしまったからと言っていました。友人が見たものはBも同じく見ていたのでした。
埼玉県秩父市定峰