旅人たちは唯一の人家であるあばら家に宿を借りていた。
この家には老婆と若く美しい娘が2人で住んでいたが老婆は旅人を泊めては寝床を襲って石枕で頭を叩き割って殺害し(天井から縄をつけた大石を落として圧殺したとも言われている)、亡骸は近くの池に投げ捨て奪った金品で生計を立てるという非道な鬼婆だった。
娘はその行いを諌めていたが、聞き入れられることはなかった。
老婆が殺した旅人が999人に達したある日、ひとり旅の幼児が宿を借りた。幼児が寝床についたのを見計らって頭を石で叩き割った。
そして、寝床の中の亡骸をよく見ると、頭を石で叩き割った幼児では無くそ自分の娘だった。娘は幼児に変装して身代わりとなり、自分の命をもって老婆の行いを咎めようとしていたのだった。
老婆が自分の行いを悔いていたところ、家を訪れていた幼児が現れた。実は幼児は浅草寺の観音菩薩の化身であり、老婆に人道を説くために幼児の姿で家を訪れたのだった。
その後、観音菩薩の力で竜と化した老婆が娘の亡骸とともに池へ消えたという。
一説によると、観音菩薩が娘の亡骸を抱いて消えた後、老婆が池に身を投げた。老婆は仏門に入って死者たちを弔ったともいわれている。
浅茅ヶ原の鬼婆浅は、「一つ家の鬼婆」とも呼ばれている。
東京都台東区花川戸2丁目4−15