今から400年程前の江戸時代にこの巨石を切り出そうとしたところ、岩の裂け目からものすごい勢いで白い煙が音を立てて吹き始めた。
やがて煙は白色から黄色、赤、青、黒へと変わり石切職人達は手足をふるわせ、悶え苦しみ斜面を転がり息絶えてしまったという祟りの伝説がある。
こしき岩(甑岩)の基本情報
周囲約40m、高さ10mの大怪石(花崗岩)である一大霊岩です。酒米を蒸す時に使う「甑(こしき)」という道具に似ていることから「甑岩」と名づけられた。
「甑岩」にお参りすると【子授かり】【安産】のご利益があると云われております。
甑岩の怒り
今から400年程前、大阪城の石垣を築く工事が始まった頃の事です。日本全国のお殿様が家来に命じて、あちらこちらの山を探させ、大きな石を見つけては、大阪へ運んできました。
あるお殿様がこの甑岩に目を付けました。「あんな大きな石なら、城の石垣にすればさぞ見事なものであろう。是非もっていって、手柄にしたい。 早速切り出せ。」
それを聞いた甑岩の村の人たちは心配しました。「この岩は昔から白い龍が住み着いている神さまの岩だ。これを割って、ここから運び出すようなことをすれば、どんなたたりがあるやもしれん。お願いです。おやめ下さい。」村の長老達は必死になって役人に頼みました。
けれども役人達は、この申し出に耳を貸そうとはしませんでした。「お殿様の言いつけだ」と、大勢の石切職人がいっせいにうち下ろした槌の音で、ノミが岩に食い込みました。カーン、カーンと響く音は、山々にこだましましたが、見守る村人の耳には、山鳴りの音のように無気味に聞こえるのでした。
「これは大変だ。必ず祟りがあるぞ。」大声で怒鳴りましたが、石切職人たちの耳には届きません。
ノミを打つたびに火花が散ります。それがだんだん激しくなり、そのうちに岩の裂け目から白い煙が吹き始めました。おそろしい事が起こるに違いないと思う間もなく、その煙が白色から黄色へ、そして赤に、それから青、黒へと変わり、それらが入り交じって、ものすごい勢いで音を立てて吹き出しました。
その熱気は、不思議な力をもっていて石切職人達は手足をふるわせ、苦しみもだえ、斜面を転がり落ちました。そして、やがて息絶えてしまったのです。
その様子を見た役人達も、さすがに震え上がり、命からがら逃げ出しました。こんな事があって、甑岩はいっそう人々から大切に思われるようになりました。今でも大岩には当時のノミの跡が残っている。
兵庫県西宮市甑岩町5−4
参考: 『ふるさと昔話』こしき岩のいかり
参考:越木岩神社「ご神体」